Construction Records

2024.8.21

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季節が移ろい、人々が行き交う銀座の街の日々。

数寄屋橋交差点一角の内側で新しいGinza Sony Parkへ生まれ変わっていくプロセスやその時々にしか見られない工事現場の営みを映像や写真として記録してきました。

そして、新しいGinza Sony Parkがその姿を現しました。

外観イメージ。歩道の水たまりに街の雑踏が反射して映っている。

街が銀色に眠るとき
誰かの放った魚たちが
信号の青を身体にうつし
夜に光を反射する

街が銀色に眠るとき
行き交う人たちは消え
静かな寝息の中で
私は思い出す

街のイメージ。Ginza Sony Parkの工事仮囲いのアートの前を人々が行き交っている。

街には空白の数年間があった
誰もが微笑みを隠して
言葉を飲み込む日々もあった
音のない街に差し込む
光と影
鳥たちだけが 銀色の朝を迎えた

いま この街を飛び交う言語の鮮やかさ
いくつもの言葉の重なりを泳ぐとき
潮の流れと共にうつろい
私たちもまた姿を変える

内観。地下外壁工事で増し打ちされたコンクリートの手前に鉄筋が張られている。

途切れることなく
結ばれていく直線が
物語をつくる
星々を結ぶようにして
緯度 35.672340821655915
経度 139.76351606298394
その重なる座標の下に埋められた
一粒の種を
私は思い出す

内観。地下部分に構台が組まれている。俯瞰風景。数寄屋橋交差点を行き交う冬の装いの人々の長い影が落ちている。々

ずっとここは止まり木だった
場所の持つ意味は
誰かの思惑をよそに
知らぬ間に描かれているだろう

見えない風の流れに
一枚の葉を任せるように

ここに生きる人
かつて生きた人
通り過ぎていく人
そして
いつの日かこの場所に
新しい名前をつける人

それぞれの足跡を
私はひとつずつ数えて
この壁に年輪を刻む

俯瞰風景。地下部分にくまなく足場が組まれている。俯瞰風景。地下部分にくまなく足場が組まれている。

地下に水脈を隠し
全ての立方体は
その窓を瞳として開き
あなたと街を写す

行き交う人々がいて
実る果実がある

そこに生まれる文化が
街に光を放つ

すり減らした踵の分だけ
やさしく開く扉がある

この街を愛するものたちが
この街を銀色に深く磨きあげてきた

外観。数寄屋橋交差点からのぞむGinza Sony Park。手前に車が行きかう。

街が銀色に眠るとき
積み重ねた時間の中に
柔らかな光がある

誰しもが羽を休める
余白としての座標
新たな芽吹きの朝に
私は目を覚ます

詩:菅原敏

菅原敏(すがわら・びん)
詩人。2011年、アメリカの出版社PRE/POSTより詩集『裸でベランダ/ウサギと女たち』をリリース。以降、執筆活動を軸にラジオでの朗読や歌詞提供、ギャラリーでの展示、欧米やロシアでの海外公演など幅広く詩を表現。近著に『かのひと 超訳世界恋愛詩集』(東京新聞)、『季節を脱いで ふたりは潜る』(雷鳥社)。
東京藝術大学 非常勤講師
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詩人 菅原敏
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