しいたけ.の空間占い

2025.8.7

「しいたけ.の空間占い」のキービジュアル。空間占いのスポットサインが屋上の植栽の前に掲出されている。

Ginza Sony Parkは「そこを訪れる人たちに、何も強制する力を感じさせない聖地」であり、現代における「空き地」

優しく語りかけるような言葉で、人々の心にそっと寄り添う「しいたけ占い」で人気のしいたけ.さん。

ある日、Ginza Sony Parkをはじめて訪れた際、都会の喧騒の中でも、ここであればひとりで心置きなく心身を休めることができる、と感じたことがきっかけとなって「しいたけ.の空間占い」は誕生しました。

しいたけ.さんとGinza Sony Parkがタッグを組んだ「しいたけ.の空間占い」は、毎週月曜に配信されている「週刊しいたけ占い」の内容と連動する形で、12星座ごとの「やってみてほしいアクション」と、それがGinza Sony Park園内で体験できる「おすすめの空間」を毎週水曜にお届けしました。(2025年5月14日~8月5日)

「空間」を占いに取り入れるという新たなチャレンジを行ったしいたけ.さん。Ginza Sony Parkという場所に感じたことや、空間占いという実験を通して感じとった想いを、コラムに書き下ろしてくれました。

こんにちは。しいたけ.です。

5月からの三か月間、毎週水曜日更新の「しいたけ.の空間占い」を読んでいただき、ありがとうございました。

今回、これまでの「空間占い」を読んでくださっていた読者の方への感謝の気持ちを伝えると共に、改めて、僕自身がGinza Sony Parkという場所に何を感じたのか。そして、その場所を舞台に「空間占い」をしてみて、どうだったのか。そのことについて、コラムという形で書く機会をいただきました。

色々なことを書いていきたいのですが、まず、こういう話からさせてくださいね。

Ginza Sony Park内観。「しいたけ.の空間占い」のスポットサインが設置された、コンクリート柱が並ぶ広々とした空間

子どもの頃、毎週楽しみに見ていたアニメがあったのです。

当時、僕も含めて、全国の子どもたちにとって、「金曜日の夜の7時は、絶対にテレビの前に座って、あのアニメを観る! 」と決めていたぐらいに、絶対的な存在があったのです。かなりの長寿番組でもあり、今でも、放送日と時間が変更された上で、続いているのですよね。

そのアニメは、小学生の主人公の元に、未来から猫型ロボットがやってきて、色々な未来の道具を出していくような、少し不思議なSFストーリーなのです。

ただ、僕自身は話の本筋よりも、子どもたちがよく利用していた「空き地」の存在がかなり強く、思い出の中に残っているのです。

アニメに出てくる登場人物たちも、学校が終わって家に帰ると、背負ってきたランドセルを放り投げ、みんなが集まる空き地に向かう。スマホも携帯電話もなかった時代だから、子どもたちにとって、「とりあえず、空き地に行けば、誰かしらいる」という集合場所でもあったわけですね。

その「空き地」という存在は、今ではほとんど見ることができなくなりましたが、その場所は、昭和の時代に、どこかの建設会社か地主さんが所有している土地だったのかも知れません。土管などの建築資材が置かれているけど、基本的には子どもたちに遊び場として開放されており、アニメの中では、そこで野球をしたり、大事な作戦会議を開いたりと、子どもたちの「大事な居場所」として描かれていました。

今から30年以上前、このアニメをリアルタイムで見ていた僕の世代でさえ、いわゆる、「遊び場として開放されている空き地」の存在をあんまり身近で見たことがなくて、「空き地って、いいなぁ」と、大きな憧憬を持って、テレビの画面に食いついていた記憶があります。

思い出話が長くなってしまったのですが、Ginza Sony Parkに初めて足を踏み入れた時に、僕の中にあった、憧れの居場所としての「空き地」が実際に目の前に現れた感覚がありました。しかも、東京の銀座に。

アニメの中にあった空き地は、土管だけあって、「あとは自由に使ってください」と、子どもたちにとって聖地のように扱われていたのだけど、それと同じようにGinza Sony Parkは、コンクリートの建物だけあって、「あとは自由に使ってください」の感覚がありました。

その「思い切りの良さ」が本当にありがたかったのです。

Ginza Sony Park内観。吹き抜け空間の手すりの近く「しいたけ.の空間占い」のスポットサインが設置されている。

人はなぜ、「空き地」を必要とするのでしょうか?

「空き地」とは、そこを訪れる人たちが目的もなく、「何か面白いものがないかなぁ」と、フラフラしながら吸い寄せられていく場所でもあります。

現代における「空き地」はおそらく、動画投稿サイトやSNSなど、スマホを通して見ていく世界の中に存在している気がしています。スマホを通して、「何か面白いことないかなぁ」とフラフラ立ち寄って、実際に、その中で面白いことをしている人たちに「いいね」を付けたりしている。

「時間がもったいないから、スマホをずっと見るのはやめなさい」と大人たちから言われたとしても、簡単にスマホを見るのをやめられない大きな理由のひとつに、「そこに、目的を持たないで済むような空き地があるから」という背景があるような気がしているのです。

子どもも、大人も、「空き地」に惹かれていく。

「空き地」だけが、何かの目的を持たなくても良いし、誰かからの指示を受けなくても良い場所。

もちろん、上記で説明してきた「空き地」ではなくて、「身を休める場所」は最近、都市の中にも増えてきたような気がしています。ありがたいことに、屋外においても、商業施設のような場所においても、ベンチなど、腰を下ろして休める場所は増えました。

でも、僕自身も経験があるのですが、駅前にあるベンチなどで「よっこいしょ」と腰を下ろして座っていると、まっすぐに前を見据え、目的地に向かって颯爽と歩いていく社会人の方々が目の前を通り過ぎていくのです。それを目撃すると、「こんなことをしていて良いのかな」と、堂々とのんびりとできない空気になっていってしまう。

スマホの中に、「空き地」を見つけることはできるけど、現実世界の中で、「空き地」を見つけるのは難しい。

Ginza Sony Park内観。プロムナードの一角に「しいたけ.の空間占い」のスポットサインが設置されている。

そんな中、今回のお話を頂いて、足を踏み入れたGinza Sony Parkは、「そこを訪れる人たちに、何も強制する力を感じさせない聖地」であり、現代における「空き地」のような存在に感じられたのですよね。

僕自身、この三か月の間、時間を見つけてはGinza Sony Parkに足を運んで、ただそこで、ぼーっとする時間を楽しんでいました。

そして、この場所で皆様にお届けする「空間占い」を考え、執筆していると、今までの自分の占いにあった「こうでなければいけない」という感覚からも、自由になることができた気がしたのです。

僕は自分の占いにおいて、いつの間にか、「解決策を示さなければいけない」という固定観念を抱えてきてしまったような気がしています。

もちろん、それは悪いことではないと考えるのですが、無意識のうちに、毎週の占いの中で、自分の役割を決めつけ過ぎてしまって、正直、苦しさを感じてしまうこともあったのですね。

でも、僕にとって「とりあえず、Ginza Sony Parkに行ってみようぜ」と言えるような「空き地」に出合い、そこで、「しいたけ.の空間占い」という新しい連載のご縁を頂いたことによって、「もっと自由で良いんじゃないか」と感じられるようにもなってきたのです。

「しいたけ.の空間占い」のマップをスマートフォンで確認する来園者。ショーケースのマップには12星座のアイコンが並ぶ。

占いを読んでくれる人に対して、Ginza Sony Parkでも良いし、または、家の近所でも良いので、何かしらの動作やアクションをしてもらって、その場の空間で遊んでもらう。たとえば、大人になると、コンクリートの地面は、ただ歩いて通り過ぎるものになるけれども、あえてそこで、しゃがみこんで、地面を眺める時間を持ってもらったり。

僕の中ではかなりワクワクした実験でもあったのですが、「無駄な時間を使わず、目的に沿って、まっすぐに自分の道を進まなければいけない現代人」に対して、「目的もなく、ただ、空き地に行ってみる。その場にいる人たちの雰囲気にも感化されて、新しい遊びを思いつくような、余白の時間」を提案できるような占いは、本当に楽しく、思い出に残るものになりました。

最後のご挨拶がかなり長くなってしまってごめんなさい。

これからも、皆様が素敵な「空き地時間」を過ごされることをお祈りしております。

また、何かの機会にお会いできたら、とても嬉しいです。

しいたけ.

しいたけ.のプロフィール画像。
しいたけ.
占い師・作家。
早稲田大学大学院政治学研究科修了。哲学を研究するかたわら、占いを学問として勉強。
2014年から約8年半、デジタルマガジン『VOGUE GIRL』(2023年6月末に終了)で「週刊しいたけ占い」や「上半期・下半期しいたけ占い」を連載していた。
現在は「しいたけ占い公式サイト」で、毎週月曜日に公開される「週刊しいたけ占い」と、半年ごとに公開される「上半期・下半期しいたけ占い」を執筆している。
また、雑誌『AERA』で「午後3時のしいたけ.相談室」を連載しているほか、ムック「anan特別編集 しいたけ.カラー心理学」を毎年執筆。自身のnoteでも、毎月の12星座占い、コラムや悩み相談などのコンテンツを連載中。
「しいたけ.」という名前の由来は、唯一苦手な食べ物が「しいたけ」で、それを克服したかったから。

『anan特別編集 しいたけ.カラー心理学2025』(マガジンハウス)が発売中。その他、近著は『しいたけ.の小さな開運BOOK』(マガジンハウス)、『しいたけ.のやさしいお守りBOOK』(マガジンハウス)、『しいたけ.カラーカード占い』(マガジンハウス)、『みんなのしいたけ.相談室』(朝日新聞出版)など。

Web:しいたけ占い公式サイト
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Instagram:@shiitake7919
note:しいたけ占いのしいたけ.