Park Live Report : D.A.N.

「Park Live Report : D.A.N.」告知ビジュアル

【ライブレポート/ライター Takanori Kuroda】

配線がむき出しになったコンクリート打ちっぱなしの空間は、どこか退廃的な雰囲気をも醸す長方形の壁に囲まれている。ここは、去年9月末に一時閉園した「Ginza Sony Park」の地下。2024年の完成を目指して現在建て替え工事中だが、その一角を利用し昨年末より「Park Live」が再始動し実験的なライブパフォーマンスが定期的に繰り広げられている。

今夜、この場所で音を奏でるのは3人組オルタナティブバンドD.A.N.。昨年11月にリリースしたサードアルバム『NO MOON』をひっさげ、配信では初となる3人編成での出演だ。櫻木大悟(Gt, Vo, Syn)と川上輝(Dr)はうずたかく積み上げられた機材に囲まれた状態で横並びになり、市川仁也(Ba)はその2人と向き合う形でベースアンプの前に立つ。まずはアルバム『NO MOON』のラストを飾る表題曲からこの日のライブはスタート。月が焼失し少しずつ変容していく世界ついて歌うこの曲は、SF的なコンセプトのアルバムを象徴するナンバーであると同時に、何もかも変わり果ててしまったアフターコロナの世界を生きる、私たちに一筋の希望の光を指し示す楽曲だ。

“D.A.N.”によるPark Live風景1 青のライト
“D.A.N.”によるPark Live風景2 青のライト

オリジナル音源では打ち込みのリズムに生ドラムを融合させていた川上だが、この日はリズムマシンを駆使して重層的なリズムを繰り出し、そこに市川がうねるようなベースを重ねていく。櫻木はProphetのシンセを弾きながら、艶かしいファルセットボイスと地声を使い分けソウルフルなメロディを歌う。〈I don't know I don't know where am I now ? I don't know where I'm going? where I'm going to?〉というフレーズは、コロナ禍で多くの人が感じている「不安」であり、人間誰しもが持つ「我々はどこからきて、どこへいくのか」という根源的な問いでもある。

“D.A.N.”ボーカル櫻木大悟

ダビーなインタールードを挟んで演奏されたのは、「SSWB」。2017年にリリースされたEP『TEMPEST』冒頭曲で、オリジナル音源は躍動するベースラインと抑制の効いたドラム、小林うてな(Black Boboi)によるスティールパンが織りなすミニマルなアンサンブルが印象的だった。が、ここではリズムマシンの無機的なビートとオリエンタルな響きのシンセを前面にフィーチャーし、ベースは時にシンプルなフレーズで曲の重心を支え、かと思えば高音のアルペジオでボーカルに絡みつく。ストイックなまでに削ぎ落とされたサウンドプロダクションから、より多層的・重層的な方向へとシフトした『NO MOON』仕様のアレンジといえるだろう。

“D.A.N.”によるPark Live風景4 青のライト
“D.A.N.”ベース市川仁也

「Fallen Angle」は、『NO MOON』の中でも一際アグレッシヴなナンバー。ケモノの鳴き声をミックスした不穏なシンセをバックに、歌心たっぷりのベースと櫻木の弾くアンビエントなエレキギターが混じり合う。スモークの焚かれた真っ暗な空間をいく筋ものレーザー光線が切り裂いていく、映像作家Ryuichi Onoの演出も圧巻だった。

“D.A.N.”によるPark Live風景6 緑色のライト
“D.A.N.”ベース市川仁也

"安心は大概 簡単ではない"と歌う、まるで今の世界情勢を予感していたかのような「Borderland」を経て、ラストはアルバム『NO MOON』の1曲目を飾る「Anthem」を披露。「誰もが聴いて盛り上がってくれるような、文字通りアンセムみたいな楽曲が作りたかった」と以前、彼らにインタビューした時に櫻木が語ってくれたが、まるで点描曼荼羅のような幾何学的なベースラインやバレアリックなリズム、縦横無尽に飛び交うシンセサウンドが混じり合い、プログレッシヴな展開を見せるこの曲はD.A.N.の新境地。近年、UKラッパーに傾倒している櫻木が曲の中盤で披露するラップは、この日のハイライトといえるだろう。

“D.A.N.”ドラム川上輝
“D.A.N.”によるPark Live風景9 赤のライト

「D.A.N.でした、ありがとうございました」と短く挨拶し、この日のライブは終了。"Revolution For Changes 今 時代の変わり目"と歌う、「Anthem」のメロディがいつまでも耳に焼きついて離れない。すでに確立したスタイルさえ手放し、変化していく彼らの姿にただひたすら胸が熱くなった。

”D.A.N.” 川上輝(左)、櫻木大悟(中)、市川仁也(右)、Ryuichi Ono

D.A.N.の3人と、映像作家Ryuichi Ono

プロフィール

”D.A.N.” 川上輝(左)、櫻木大悟(中)、川上輝(右)

D.A.N.

2014年、櫻木大悟(Gt,Vo,Syn)、市川仁也(Ba)、川上輝(Dr)の3人で活動開始。2016年4月に1sアルバム『D.A.N.』をリリースしCDショップ大賞2017の入賞作品に選出。7月には2年連続でFUJI ROCK FESTIVAL'16に出演。2017年2月にJames Blakeの来日公演でO.Aとして出演。

4月にはミニアルバム『TEMPEST』をリリース。11月に初の海外公演をLONDONで行い、滞在中にはFloating Pointsのスタジオで制作活動を行う。現地のジャイルス・ピーターソンのラジオ番組〈Worldwide FM〉に出演しスタジオライブを敢行。2018年2月、UKのThe xx来日東京公演のO.Aを務める。5月にUK TOURを敢行し“THE GREAT ESCAPE'18′′に出演。7月には2ndアルバム『Sonatine』をリリースしFUJI ROCK FES'18へ3度目の出演。9月からのリリースツアーは、上海、北京、深圳、成都、台北、高雄、バンコク、香港Clockenflap Fesなど出演含むASIA TOUR、日本国内9都市と全17箇所を巡り、ファイナルは初の新木場スタジオコースト公演をSOLD OUTで終える。

2020年は最新曲を、Mogwai、Airhead、食品まつりがRemixを手掛け3週連続でリリースし、2021年10月に3年ぶりとなる3rdアルバム『NO MOON』をリリース。またユニクロやNOVAのCM楽曲、Netflixで全世界配信された渡辺信一郎監督による「キャロル&チューズディ」の劇中楽曲の制作の他、UKのElder Island、カクバリズムのVIDEOTAPEMUSICのRemixを制作するなど外部の創作活動も精力的に行う。不定期で行う自主企画〈Timeless〉ではこれまでLAからMndsgn、UKからJamie Isaac、デンマークのErika de Casierなど海外アーティストを招聘して開催している。

D.A.N. Official HP:

http://d-a-n-music.com/

D.A.N. Official YouTube Channel:

https://www.youtube.com/channel/UC0MtUeg-nWPwrSquHP-raPQ

2022年3月19日(土)Park Live 実施概要

日時:

2022年3月19日(土) 21:00~⁠

配信:

YouTube(Sony Park公式チャンネル)https://www.youtube.com/ginzasonypark

出演者:

D.A.N.⁠